ちゃんとしたえすえふ


「何故ボクが、手放しで崖の上のポニョを大絶賛か」という理由が、判明しました。


それはつまり、
「ボクの大好きな宮崎駿メソッドが、帰ってきた!」
から。


ボクの想う「宮崎駿メソッド」とは、
「まず徹底して理屈でがんじがらめにした設定というカードを、正しい順序で一枚一枚並べていく手法。」
です。
簡単に言えば、「設定重視のSF」ってこと・・・かな?


ボクには、とくに「もののけ姫」以降の作品において、そういう設定主義を「小うるさい、小理屈」として、否定的かつ意図的に排除されてる感じだったのが、ひそかな不満でした。
人間嫌いのオオカミが人間語をしゃべったり、サンがかわいい服やアクセサリを身につけてたり、動く城にもの凄そうな砲塔がついてるのに、全然使用されなかったり、テクノロジーバランスが崩壊してたり・・・等々。
それを面白い!と思うのは、本当に人それぞれの自由ですけど、ボクは設定が大好きなので、物語のために設定がないがしろにされてる事が、なんとも歯がゆく感じてしまうのです。
(いや、ボクの話の中でも、設定破綻がしばしばおきます。でもそれはたいてい意図的ではなく「うっかり」なのです。すみません。)


まあ要するに、「崖の上のポニョ」という作品は、久しぶりの論理の塊の作品!
つじつまの合わない事が皆無。
一見「5歳の子レベルにまで常識をかなぐり捨てて、感覚で観ないと、楽しめない。」という作品のようでいて、実は、
「隅々まで徹底的に、精密な設定でがんじがらめな、大変理屈っぽい作品」というのがボクの感想。
ピュアだ。



  (以下、激しくネタバレにつき、要注意!)


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●宗介が母親を「りさ」と呼び捨てにしている理由。
親同士が、「りさ」「こういち」と呼び合ってるから。
ラブラブですね。
人が人を呼ぶとき、一番耳にする固有名詞で呼ぶのは必然的だし、理にかなってます。4〜5歳の子が、自然に親を「パパママ」「お父さんお母さん」と呼び合うと思うのは間違った考え。実際うちの子の幼稚園でも、お互いを名前で呼び合ってる親の子は、親を名前で呼んでます。
そしてこの設定は、以降の設定にも、大きく絡んでいます。


●りさが朝からクルマをぶっ飛ばしたり、しょぼんとしてる宗介をよそに、嬉々としてスーパーの荷物を抱えながら、スタスタ歩く理由。
夫・こういちが帰ってくるから。
なにしろりさの気分はハイテンション。心ここにあらず。
ラブラブですから。
それは同時に、りさの中の優先順位の高さも示しています。


●人の制止を振り切ってまで、崖の上に帰る訳。
プライオリティー最高位のこういちに、どうしても連絡がとりたかったから。
(最後の会話が「BAKABAKABAKA」でしたし。)



●なぜあの高台まで及ぶ大洪水になったか。
当然その高さに宗介がいたから。
だから、仮に警備員の言う事をきき、もっと高台まで避難してたら、もっと多くの地域が水没してたかも。



●あの洪水の災害規模。
宗介が住んでいる周辺地域だけ。
(海面が盛り上がっている描写)
しかもその海水は、通常の海水ではない。
草一本・土くれひと粒巻き上げず、おそらく、その中の生命を奪う事も無い、魔法の海水。


●宗介が自家発電機の故障箇所をすぐに見抜いた訳。
そう遠くない以前に、同様な状態を目撃したから。
(その当時、発電機をいじったのは、おそらく父・こういち。)


●住民がこの大災害でも動揺しない訳。
この地域はもともと津波などの自然災害が多い。
上記のように自宅に発電機があること、5歳の宗介がその発電機の稼働を知ってる事。
非常用電灯がすぐ取り出せるところに常備してある事、などからもこの地域の災害意識が垣間見える。


●フジモト
パンフにも一応設定は書いてありましたけど、それは置いといて劇中のみから読みとれる事。
元人間。今、人間じゃないひと。
命のスープをためる部屋に「1907」と書いてあった事から、100年以上前からあそこにいる。
だから、「デボン紀の海を蘇らせる」云々など、彼の発する言葉に、今の常識を当てはめない方が良い。
例えば「月の衝突」は、数千年〜数万年単位での心配事でしょうね。


●ポニョ
人造生物。
グランマンマーレに近い存在として、天才元人間の科学者・フジモトによって作られた生き物。
金魚ではないし、人魚ですら無い。
しいていうなら、キューティーハニーとかアラレちゃんに近いもの。


・・・・等々。
まだいろいろ相当ありそう。
・・・って、こんな誰でもすぐ気付く様なことを、「読み解いたぞ!」みたいにいちいち書き連ねるのも恥ずかしい話ですけどね。

とにかくまあ、何から何まで非常に丁寧かつ緻密に設定されていて、ポニョらが使うちょっとした魔法以外は、全部きちんと論理的に説明がつきそうで、まさしくちゃんとしたSF!
わーーーーい!
そのあたり、まさに、心からワクワクさせられました。
もっともっと繰り返し観たい!
DVD発売が、本当に待ち遠しいです。