あばたー

アバター」観てきました。
ボクが観たのは、3D吹替え版。

話題の映画ということもあり、場内は満席でした。
そうなると、ふだんあまり映画を見慣れない感じの
ヒドいマナーのお客さんも結構いたりして、
ちょっとイラッとしたりもしました。(笑)

以下は、多少のネタバレも含む、ボクの映画レビューです。
 

      *
      *      
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
   「ネタバレ注意!」
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *
      *


映画「AVATER-アバター」レビュー



 先に、文句をつけます。
 さすがアメリカ映画だなと思ったところ。
 それは、「食事シーン」。

 こちら側の世界の食事シーンがいちいちマズそうなのは、
何度も描かれててよくわかりました。
 でも、せっかくそれを描いたんなら、あちら側の世界の、
おそらく「不思議」で「豊か」で「感動的」であろう食事シーンを描かなければ、
片手落ちでしょう?
 非常にもったいないと思います。
 なんでアメリカ映画って、「おいしそうな食事シーン」を描けないのかなあ?


 あと、「くっそ!やられた〜〜〜!」です。

 このレビューは、主にその「やられた〜〜〜〜!」についての考察です。


 ボクは映像作品や漫画などを鑑賞する時、
そこに登場する「未知の乗り物」に注目します。
 もちろん、「未知の乗り物」の存在が映画の善し悪しを決定する
絶対条件ではありませんが、
それでも、例えば良い映画には、映画でしか体験出来ない「未知の世界」があり、
「未知の世界」に行く為には当然「未知の乗り物」を描く必要がある。
と、信じているからです。

 解り易い例で言えば、ハリーポッター
 一般人には行く事の出来ない魔法の学校「ホグワーツ」に行くために、
秘密の機関車「ホグワーツ特急」に乗る必要があるという設定です。



 「未知の乗り物」は必ずしも、「架空の乗り物」ではありません。
 日常にある乗り物でも、日常運転しない人に寄る運転や、
普段は走らないような場所を走行することにより、
当たり前の乗り物が「未知の乗り物」に変身するわけです。
 クレヨンしんちゃんの「大人帝国の逆襲」の幼稚園バスは代表例です。



 時として、その乗り物そのものが、主役になる事さえあります。
 例えば、こないだ簡単にレビューした「カールじいさんの空飛ぶ家」。
 最高傑作はヴォルフガング・ピーターゼン監督の「Uボート」。
 そして、実はマジンガーZ以降のボク達が大好きな「ロボットアニメ」は、
まさに、「主役化した未知の乗り物」そのものなのです。




 あと、良く誤解されるのが「乗り物」=「メカ」。
 これ、違います。
 生物だって、乗り物です。
 むしろ、自律して動いたり、スイッチやハンドルではないものによる制御が必要とされる分、
「魅力的な乗り物」としては、格上と言えます。
 代表的なのは「ヤックル」。
 もののけ姫にも登場しますが、
アニメージュ文庫の「シュナの旅」のヤックルも素晴らしいです。



 とにかく、「未知の乗り物」は人を引きつける力のある、
素晴らしい要素です。
 遊園地が楽しいのは、みんな実のところ潜在的
「未知の乗り物」が大好きな証拠と、ボクは認識しています。




 しかし、「未知の乗り物」はただ出せばいいというワケではありません。
 素晴らしい外見を誇っても、中身がまったく解らない、
ハリボテ型「なんちゃって未知の乗り物」が、残念ながら横行しています。

 重要なのは、その乗り物の乗り心地、手触り、そしてなにより、
その乗り物への作り手の愛情です。

 逆に、「愛情あふれる乗り物」の登場により、
ちょっとイマイチかなと思うような幼稚なストーリー展開でも、
ものすごく人を引きつけて、大ヒットになる場合もあると思います。
 例えば、スターウォー・・・いや、この具体例は、
ファンの方々に殺されたくないのでやめておきましょう。



 この「乗り物への愛情」を、作品に昇華するレベルまで注ぎ込める人は、
実はそれほど多くありません。
 たまにそれが描かれた作品があっても、たいていは偶然の産物によるもので、
その作家が常に乗り物視点で作品を作り続けているかというと、
案外そうでもないことが、多いです。

 しかしながら、やはり物語を乗り物を中心に据えて表現出来る希有な作家は、
確実に存在しています。
 その中でも、「素晴らしい乗り物を描ける作り手」のボクの考える二大巨匠は、
言わずもがなの宮崎駿監督。
 そしてこの「アバター」を作り上げた、ジェームズ・キャメロン監督なのです。




 この超人的なまでに「未知の乗り物」に愛情を注げる人達が描く乗り物には、
3つの重要な要素があります。

   1 危険であること。
   2 不便であること。
   3 不快であること。

 この3つの要素は一見すると、前述の「素晴らしい〜」と矛盾してるようですが、
その真逆を考えれば、納得出来ます。
 つまり、「安全」で「便利」で「快適」な乗り物。
 うんざりするほど、退屈でつまらないですね。

 さらに見せ方の演出方法にも特徴があります。

   1 搭乗者視点。
パイロット、搭乗員の。良い作品では必ず乗ってる人の斜め背後からの絵。
つまり窓の外の風景や計器類を描き、さらにその人達の視線の動きを追っている。)
   2 運転方法。
(誰が?どこで?は勿論、ざっくりした操縦法も。)
   3 外回り。
(特に大きな乗り物の場合、乗り物の外側の表面を這い回ったり走り回ったりして、
その乗り物のディティールを見せるとともに、大きさを対比表現する。)
 



 さて、その点を踏まえた上で、「アバター」のレビューにかかるわけですが、
結論から言えば、
「ものすごく素晴らしい!本当にものすごく素晴らしい乗り物映画!」
でした。

 まず、乗り物の数々。どのデザイン(外見と内装とコクピット)も、見事!
 もちろん、そもそも主人公操るアバターそのものが乗り物なわけですし。

 そしてその登場乗り物すべてにおいて、
上述の「ステキ乗り物・3要素」つまり、
「危険」「不便」「不快」が見事に反映されてました。
 そしてそれらを乗り越えてなお、「乗ってみたい!」と思える爽快感にまでも、
辿り着いてました。

 さらに「素敵乗り物・3演出」もバッチリ!
 簡単そうにやってますが、このストーリーとはたいして関係のない、
手間に対してそれに見合う効果があるかどうか、はなはだ疑問な手順を、
あえて、いちいち、わざわざ踏んでました。
 これは、作り手が本物の「乗り物フェチ」でなければ、絶対になし得ないことと
断言します。


 もはや細かいところを、すべてあげつらうことはないでしょう。


 「未知の乗り物」を観て、主人公達と一緒に乗って、素直に楽しむ。
 見終えて、乗り心地の余韻を楽しみ、
 「自分も乗ってみたいなあ。乗ってこんな景色を見てみたいなあ。」と
イメージを膨らませる。

 それこそ、正しい「乗り物映画」=「アバター」の楽しみ方でしょう。


 ただ、あえて言わせてもらえば、AMPスーツ。
 このエイリアン2に登場するパワーローダーよろしく
マスタースレイヴでそうじゅうする、ロボには、もう本当に声を出して
「くっそ!やられた〜〜〜〜!」でした。
 以前から予告で観てたときから、こりゃ、やられそうだと思ってましたが、
よもや、ここまでやられるとは。
 未来少年コナンのロボノイド、装甲騎兵ボトムズのATは、
きっとこの存在感、この乗り心地なんだろうなと、
圧倒的パワーで見せつけられた気分です。

 ジュラシックパーク以降、恐竜感が固定されちゃって、
恐竜ものが一気に下火になってしまったのと同様に、
リアル系ロボ物がこれで決定打みたいにならないことを、切に祈るばかりです。
 それほどまでの素晴らしさでした。

 そのうえ、この素晴らしいマシンの見せ場を、
本当に素晴らしい箇所に持ってきてくれてました。
 「ああ!このマシンを、ここでこうやって見せてくれるんだ!この監督は!
有り難う!そしてこんちくしょう!」
 気がつくとボクは3Dレンズ越しに、涙していました。


 いうまでもなく、3Dで見れる人は3Dでの御鑑賞がオススメです。



・・・・まあ、ただ、食事シーンがなあ〜〜〜〜。
良い食事シーンに関する、ボクが結論を得ている「重要な要素」も
あるんですけど、それはまた別の機会に。